知らなかった!梨の不思議 トリビアページ






 
 和ナシは、中国原産の野生種のヤマナシを原種とする日本独自の栽培品種だ。

 ヤマナシがいつごろ日本に入ってきたかは定かではないが、1世紀ごろの集落であった登呂遺跡から、ヤマナシの実を煮て食べていたと思われる痕跡が見つかっている。それ以前の遺跡からは見つかっていない。

 ヤマナシの実は固く酸味も強いため現代人の口には合わないが、当時は、腹持ちのための食料のひとつであったのだろう。

 ヤマナシは里地付近に自生し、山の奥深くには見られない。これらのことから、ヤマナシは弥生時代に大陸から持ち込まれ、食用果実として住居近くに人為的に植えられ育てられていたのが、野生化し、日本固有のヤマナシ(ニホンヤマナシ)になったと推察されている。

 飛鳥時代、持統天皇が、五穀に加えナシなどを植えるようにと詔(みことのり)を発している。このころには、ヤマナシは栽培品種として育てられ、姿も味も変えて、生食果実としての価値をもつに至っていたと思われる。日本に原生するナシには、ヤマナシのほかにもミチノクナシ、アオナシ、マメナシがある。

 ミチノクナシ、アオナシはヤマナシの変異種と見られるが、マメナシは氷河期を生き延びてきたヤマナシとは別系統のナシの品種。

 現存する日本固有の自生マメナシは、中部地方を中心にわずかに数百本を残すだけの希少種で、三重県の多度のマメナシは天然記念物指定を受けている。マメナシは名が示すように、豆粒のような実をつけるが、食用に向かない。

 栽培品種の和ナシは、江戸時代には100を超える品種が果樹園で栽培されていた。明治に入って、二十世紀や長十郎が発見され、栽培技術が大きく進化した。戦後の1960年代から70年代は新品種ラッシュで、幸水や豊水など現在主流のナシが誕生した。


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